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■ 掲載記事




東京新聞・中日新聞掲載(2004年7月6日号)

随論「老いる」6
さて、新米の諸君、どうするかね

 人間にも、人間が集まってつくる社会、国家、世界にも問題はあまたある。問題のなかでそのときまずぜひ解決されるべき、そう認識されるのが課題だが、課題を中心に問題解決の緊急度、必要度に応じて優先順位が決められ、問題のパラダイムが形成される。

 課題も問題のパラダイムも「ルツボ政治」と「サラダ政治」とでは大いにちがう。今や世界にひろがる「ルツボ政治」の課題が「テロリスト」「テロリスト国家」撲滅の戦争をふくんでの「正義」の強行、強権の行使、その尻馬に乗っての「派兵」、あるいは年金改悪の強制なら、「サラダ政治」の課題は、まず、われら年よりをふくめてレタス、トマト、ハム、タマゴが安心して生きていけるパラダイムの形成、確保だろう。問題のパラダイムもちがったかたちで形成される。

 今は、世に言う「団塊世代」が老いて定年退職を迎える時期だが、この世代はかつて若いころ、少なからぬ数が「革命」を叫んで「全共闘世代」と自称、他称された世代だ。若いころ「革命」だった彼らの課題は、その後、「就職」に変わり、会社に入ってからは「仕事」「出世」「金儲け」あるいは「家庭」「子育て」とさらに変わっていったにちがいないが、それでも彼らの問題のパラダイムには「革命」がいぜんとしてどこかに残り、酔えば「おれはやるぞ」と言い、仲間と革命歌を歌い、「今どきの学生はなんだ、おれたち若いときは」と怒り、「ぼくらの世代は何より数が多い。僕らが起き上がれば、オダさん、日本は変わるよ」と私は何度も何人かから聞いてきた。

 しかし、今、彼らも年老い、「家住期」はすんで「林住期」に入らんとして、課題の変更がいやおうなしになされているときだ。たぶん、彼らの人生の課題は今や、われら先輩の年より同様、「老後の安定」だろうが、しかし、今はこの「老後の安定」が危機に瀕している事態だ。これまでの政治の安定の土台となって来た憲法の平和主義は「改憲」で姿を消そうとしているし、最近の新聞を読むと(「朝日新聞」、2004・6・28)、アメリカのある調査では「退職後の備え」で、「政府を信頼できるか」の問いに、中国人24%、インド人が21%の答えであったのに対して、日本人は0%。

 これが「革命」のニ文字をパラダイムのどこかに残した「全共闘世代」をふくめての「団塊世代」が今入らんとする日本の年よりの世界だが、さて、新米の年より諸君、どうするかね。






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